HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)は、ヒラカワデザインスタジオ代表 平川真紀がプロジェクトディレクターをつとめる行政プロジェクトです。東大阪市の企業、そして市域のブランド価値の向上を主なテーマに推進しています。市内モノづくり企業とデザイナーの協働を通じて東大阪の多彩な技術や創意に富んだモノづくりの魅力を国内外に広く発信しています。
HIGASHIOSAKA FACTORies WEBSITE
https://ho-factories.com
ことの起こりは2017年6月。近畿大学文化デザイン学科准教授・柳橋肇氏のご紹介で、東大阪市役所経済部(現・都市魅力産業スポーツ部)モノづくり支援室の皆様にお会いしたことがこのプロジェクトの起点でした。東大阪市は日本有数のモノづくりのまちとして、市内企業製品のブランド認証制度や大学との産学連携等で活性化を行ってきました。新たな一手のため、「プロフェッショナル・デザイナーとの連携」についてのご相談を受けたことが始まりで、初年度は「都市ブランド形成推進事業」としてスタートしました。
東大阪市内には6,000社にのぼるモノづくりに関わる企業があり、その多くは部品製造や賃加工を主業務とされています。このような業態は景気動向や発注者側の経営状況に左右されやすいことから脱却を図る企業も多くあります。しかし製品開発には製品そのものの価値だけでなく、事業企画からマーケティング、コミュニケーションやサービス等のブランド価値の創出なども含めたソリューションが求められ、事業としての成功事例を作ることは簡単ではない状況があります。狭義のデザインから広義のデザインへとデザインの役割が益々広がっていること、デザインによる付加価値の高い製品開発の必要性が高まっていることも背景にあります。そこで、デザインを最大限に活用した市のパイロット事業としての製品開発を推進し、そのプロセスや成果の発信を行うことで「都市としてのブランド力強化」と「企業の新たな価値創造」に繋げることを主目的とした「東大阪市高付加価値新製品開発支援業務」として、このプロジェクトが推進される運びとなりました。
プロジェクト開始時に「企業とデザイナーとのマッチング」、「デザインプロジェクト」、「展示会出展」などの具体的な計画があったわけではありません。企業訪問やデザインセミナーにて企業や市との対話を重ねることで、市内企業の高いポテンシャル、東大阪ならではの魅力や産業発展の歴史と構造、多くの企業が抱える問題点などを共有することからプロジェクトは始動しました。
サーベイの結果を元に、モノづくり支援室と共に未来に向けた中長期ビジョンを描き、具体的な事業立案と仕様協議を行うことで、毎年あゆみを進めてきました。
BACKGROUND OF THE PROJECT
OUTLINE OF SPECIFICATIONS
HIGASHIOSAKA FACTORies 事業仕様
(2017年度〜2020年度 概要)
2017
デザインセミナーの実施(製品開発プロセス・デザイナーとの協働や契約・ブランドの重要性など)/
企業訪問によるヒアリング(5社) /事業立案に向けた協議 etc.
2018
デザインプロジェクトの事業立案/アートディレクション・ティザーサイト制作/
企業訪問によるサーベイ(22社)/企業の公募と選定/デザイナーの招聘 etc.
2019
第一期デザインプロジェクト始動/デザイナーとクリエイティブチーム全員による全社工場見学/
企業とデザイナーのマッチング/契約指導(共通契約書雛形作成)/
プロトタイプ完了までの進捗共有/プロジェクトミーティングの運営 etc.
2020
製品化プロセスの進捗共有/展示会(JAPAN SHOP)出展オーガナイズ/
製品撮影/ツール制作(ブース・パンフレット・ウェブサイトデザイン)/
プレスリリース発信/広報支援/プロジェクトミーティングの運営 etc.
第一期のデザインプロジェクトでは、電線、菱形金網、板金加工、景観鋳物のプロフェッショナルである企業4社と高い実績を誇るデザイナー4名とのコラボレーションが叶い、展示会(JAPAN SHOP)にて成果を発表しました。
大原電線株式会社 × 鈴木 元(GEN SUZUKI STUDIO 代表)
共和鋼業株式会社 × 倉本 仁(JIN KURAMOTO STUDIO 代表)
株式会社仁張工作所 × 北川 大輔(DESIGN FOR INDUSTRY 代表)
北勢工業株式会社 × 田渕 智也(OFFICE FOR CREATION 代表)
この協働から生まれたアウトプットは、製品カテゴリー、業態による特徴、事業展開の狙いなどもそれぞれ異なりますが、プロジェクト全体として東大阪市内企業の持ち味のひとつでもある「インダストリアルで実直なモノづくりの姿勢の発信」に繋がりました。生まれた製品群にて、新たな業態への事業拡大を始めた企業には、その事業が成功するように市と協力し引き続き出来る限りのサポートを行っています。
4つのデザインプロジェクトは、マッチングから契約、プロトタイプ制作、ローンチまでのフェーズを2年間の同じ時間軸の中で進め、それぞれの進捗を共有してきました。また、このプロジェクトでは、行政・企業・デザイナーの三者による編成での取り組みを、事業提案から実施までの全てのフェーズにおいて我々クリエイティブチームが運営と推進を行っています。このような枠組みとフォーメーションは他に類がなく、ビジネスモデルとしても多くの方にご興味をいただいています。
このプロジェクトをきっかけに、参加企業が自由に躍進し続けられるように。市のブランド力が向上するように。参画いただけた素晴らしい方たちと共に、今後も継続していければと願っています。
DESIGN PROJECT
DESIGN WITH PUBLIC SECTOR
都市や地域について行政と共に考え、未来を描き、実装する。その地域の産業の特性や文化によって方向性は無限にあります。行政と企業、そしてその地域社会の発展に向けてデザインでできること、そして各分野での専門性の高いクリエイティブチームでの協働には喜びや学びが多くあります。産業や社会における「デザインによる新価値創造」を目指し今後も活動を広げていきたいと考えています。
CREDIT
Project Direction
Creative Direction
Art Direction
Design
Photograph
平川 真紀
北川 大輔
岡本 健
飯塚 大和(岡本健デザイン事務所)
長谷川 健太
櫻井 充
HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)は
東大阪の多彩な技術や創意に富んだモノづくりの魅力を
国内外に広く発信することを目的としたプロジェクトです。
この地に息づく優れた技術と、新たな視点や創造性を掛け合わせ
これからの時代に適した価値を提案し、産業の活性化を目指します。
そして、ここから生まれたモノや関係性が
FACTOR(ファクター:きっかけ/因子)となり新たな価値や
未来への可能性を創造するためのプラットフォームとして活動していきます。
300年以上続く歴史と、およそ6,000もの事業所を有する
「モノづくりのまち東大阪」から、いま改めて世界へ向け、
その魅力を発信します。